【精密根管治療】パーフォレーション(穿孔)している歯の治療
芦屋の歯科「朝日ヶ丘タカハシデンタルクリニック」院長の高橋です。
左上1の治療に続き、根尖部に透過像を認める隣の「左上2」の治療です。
左上1の治療後のレントゲン写真では左上2の金属の土台(コア:白く映っている芯棒)が歯根ぎりぎりまで入っているような像でした。デンタルレントゲンは2次元的に表現されるため実際には土台と歯に十分な距離がある場合が多いです。しかし、土台の先には黒い影(透過像)を認め、しかもそれが歯槽骨に達しているようにも見えました。それと歯周ポケット(歯と歯茎の溝の深さ)検査をするとある1箇所のみ局所的に深くなっていました。一般的な歯周病(辺縁性歯周炎)の場合、多くの場合歯周ポケットが全体的に深くなる傾向が強いです。今回のケースのように歯周ポケットがある1点のみ局所的に深くなる場合は「歯根破折」もしくは「ストリップパーフォレーション(穿孔:以下「パーフォレーション」と記載)」が疑われます。今回は両方の可能性を説明した上で治療を進めていきました。
「パーフォレーション」とは、歯の本来空いていないところに穴が空いている状態のことを意味します。
原因としては、
①歯科治療中の誤った処置(歯を削る道具で偶発的に空いてしまった)
②重度のむし歯
③歯根の吸収などがあります。
この中で時々見かけるのは、「歯科治療中の誤った処置」です。
歯の厚みはレントゲン写真や上から見ただけでは分からない場合が多く、人によっても、歯の生える方向によっても、歯の種類によっても歯の厚みは異なります。また歯科治療は非常に細かい作業を必要とします。私も重度のむし歯の治療中や根管治療中に歯の薄い部分に穴が空いてしまった経験はあります。
歯根周囲には「歯根膜」という血管を豊富に含んだ歯周靱帯というクッションが存在します。この歯根膜は石などの硬い物を噛んだ際にとっさに危険を察知するセンサーなのです。歯根部にパーフォレーションを起こすとまずは空いた穴より出血が見られます。また麻酔をしていなければ治療中に痛みを感じることをあります。そこに細菌感染が起こることで痛みが出たり歯茎が腫れることがあります。また経過が長期に渡ると周囲骨の吸収(骨が溶ける)を認めます。
ですから、大学では歯茎よりも下のところの歯に穴が空いてしまった場合は「抜歯」と教えられました。
ただ、現在では歯の挺出(LOT:部分矯正 MTMという場合もあります)、歯茎の処置(歯冠延長術)、MTAセメントを用いたパーフォレーションリペア(穿孔部の修復)などで歯を残せる可能性が高くなっています。
しかし、パーフォレーションが見つかった場合でも大きく空き過ぎて修復不可能な場合や修復できたとしてもその後すぐに歯が壊れてしまう可能性が高い場合は残念ながら「抜歯」という診断となります。
パーフォレーションは、CT画像などで術前に分かる場合もあれば、術中に判明したり起こったりする場合もあります。
今回のケースも従来の診断では、「抜歯」となり次の処置を考えるケースです。
当院では可能な限りそのような場合でも保存できる条件であれば患者様に十分説明を行い、(歯の寿命が他の歯に比べて短い可能性があることを)ご理解とご納得をいただいてから治療を進める(保存する)ようインフォームドコンセント(説明と同意)を大切にしております。
治療は患者様のご希望のみを尊重しすぎてもいけませんし、こちら(歯科医師側)の意見の押し売りでもいけないと思います。現在の状況、これから起こり得るであろう予測(予後)、それらに対し根拠に基づいた治療方針をいくつかご提示し、患者さんと歯科医師とで意見を擦り合わせ納得いく形で治療をすすめていくことがお互いにとってストレスの少ない関係を築けるかと思っております。
この患者様も十分なインフォームドコンセントを行い治療に望みました。
被せものと土台を外しマイクロスコープ(顕微鏡)を覗くと根管内は非常に汚れており根管外には肉芽を認めました。
すぐにパーフォレーション(穿孔)が起こっていることを確認できました。
しかも2箇所もありました。
パーフォレーションリペアの治療はMTAセメントを使用して修復します。
MTAとは:主成分のポルトランドセメントに造影剤として酸化ビスマスを添加した歯科用覆髄剤で、穿孔部封鎖、逆根管充填等に使用する、水酸化カルシウムをしのぐ硬組織誘導能を示し、生体為害性が少ないことから、直接覆髄やパーフォレーション(穿孔)部の治療に用いられる(日本歯内療法学会学術用語集から)
まずは、MTAセメントで修復する前に本来の神経管を探します。そうしなければ本来の神経管をMTAセメントで塞いでしまう可能性があるからです。本来の神経管をMTAセメントで塞いでしまうと後で見つけ出すことが非常に困難になるからです。
ですから、パーフォレーションを見つけたらすぐに修復したい気持ちを抑え、マイクロスコープ(顕微鏡)を使用し本来の神経管を入念にCTと照らし合わせながら必死に探すのです。
神経管の太さは個人により様々で感染根管では狭窄(狭くなっている)している傾向が強いです。しかも、狭窄している場合は1㎜以下の場合もあり探し見つけるのに時間がかかる場合もあります。
この患者様は幸運にもすぐに本来の神経管を見つけることが出来ました。
本来の神経管を埋めないようした上で、MTAセメントでパーフォレーション(穿孔)部を修復しました。
後日、完全にMTAセメントが硬化したのを確認してから本来の神経管の治療を行いました。
本来の神経管も根尖部に透過像があり根管内の強い感染が疑われましたので根管拡大・洗浄後、MTAセメントで根管充填を行いました。
術後、術前にあった歯周ポケットも消失し経過良好です。
当院では、患者様に現在の状況、治療によるリスク・ベネフィットを十分説明した上で、少しの可能性でもご自身の歯を残したいという方に治療を行っています。
逆に言えば、ご自身の歯にこだわりが強くなければ抜歯して次の手段(インプラントやブリッジ、入れ歯)にした方が確実で早い場合もあります。
また、どうしても抜歯しかない場合もあります。(歯周病的な問題、破折や残存歯質が少なく予後不良が予想される場合など)
当院では患者様との信頼関係が最も大切なものと考え、十分なインフォームドコンセントを行っています。
一度、他院では抜歯と言われた方でも残せる可能性があるのか知りたいという方は当院までご相談下さい。
根管治療専門サイト
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