芦屋市の歯科(歯医者)「朝日ヶ丘タカハシデンタルクリニック」の【逆根管充填（MTAセメント）・巨大歯根嚢胞】他院では、歯根端切除術は難しく抜歯をすすめられた！ページです。

『歯根端切除術は難しいと言われた』

芦屋の歯科（歯医者）「朝日ヶ丘タカハシデンタルクリニック」院長の高橋です。

患者様は、令和4年6月初診（セカンドオピニオン外来）で来院されました。　

以下、問診による病歴です↓

左上２を約30年前にむし歯が深く神経治療（抜髄処置）。その歯が、３月に入ってから内側の歯茎の腫れを自覚され、近歯科医院を受診されました。

しばらく抗生剤の内服で様子を見ていたがあまり変化はなかったようです。

その歯科医院では根の先の病気（歯根嚢胞）が大きく、口腔外科での相談をすすめられ紹介されました。

その口腔外科ではCT撮影を行い、嚢胞が大き過ぎ口蓋側からの歯根端切除は難しいと言われた抜歯をすすめられたようです。

しかし、『抜歯はしたくない』とのことでインターネットで検索され、当院へ来院されました。

・初診時所見

左上2口蓋歯肉の腫張(＋）根尖部腫脹・圧痛（ー）打診痛（ー）動揺（ー）

レントゲン・CT所見

・左上２の根尖を覆うように直径約11.25×12.82mm大の透過像を確認。

・透過像は、唇側〜口蓋側におよび両側皮質骨を吸収し穿孔している。

・さらに、両隣在歯の歯根および鼻口蓋神経付近にまで及んでいる。

・左上２根管充填の幅が広く、残存歯質が少ない。

診断

病歴からも「歯根嚢胞」の可能性が高い。

しかも、歯槽骨の吸収が唇側〜口蓋側に及ぶほどかなり巨大な嚢胞である。

左上２根尖の口蓋側に未治療もしくは破折線様の透過像を認め、それに併せて風船様の透過像を認めるため再治療での治癒の可能性は低い。

腫れを引かす確実な方法（当院の診断）は、

①原因歯の抜歯

②嚢胞摘出＋歯根端切除＋逆根管充填＋骨再生療法（保険外治療）

（但し、再発の可能性も十分にあることを説明）

＊保険治療では、「嚢胞摘出＋歯根端切除のみ」です！

今回の症例のように根管治療をやり直さずいきなり外科処置（歯根端切除）を行う場合は、再発の可能性が高いです。

なぜなら、歯根嚢胞の原因は根管内の細菌感染ですから、原因の除去ができずに嚢胞摘出＋歯根端切除を行っても再発するリスクは高いからです。

治療

患者様は、なんとか自分の歯を残したい（保存）と、

②嚢胞摘出＋歯根端切除＋逆根管充填＋骨再生療法（保険外治療）

を選択されました。

リスクの説明（一般的な外科処置後の他にご説明した内容）

・手術の成功率は、５分５分。

・術後、歯の動揺が残る可能性がある。

・歯肉退縮（歯茎が下がる）の可能性がある。

治療（切開排膿処置）

手術日を決定しましたが、術前に歯茎の腫れが内側（口蓋側）だけでなく、外側（唇側）にまで出てきたため、投薬だけでなく切開排膿処置を行い腫れが引いてから手術を行いました。

手術（嚢胞摘出＋歯根端切除＋逆根管充填＋骨再生療法）

今回の処置は長時間に及ぶため、術前に鎮静処置も行いました。

実際に手術を開始すると、嚢胞が両側の歯肉に癒着していました。

癒着していた嚢胞を慎重に剥がし、まずは嚢胞摘出を行いました。

歯根は、約３mm程度（嚢胞形成していたところまで）切除。

（感染源を確認しながら）顕微鏡を使用し、逆根管形成を行い、MTAセメントによる逆根管充填を行いました。

その後、口蓋側に吸収性膜（メンブレン）を設置し、欠損部には骨補填剤を使用。さらに、頬側にも吸収性膜（メンブレン）を設置、縫合して終了しました。

手術時間は、約２時間近くかかりました。

経過観察

経過観察は、１・３・６ヶ月後に来院頂き、レントゲン及びCT撮影を行いました。

治療後、特に歯茎の腫れや痛みなどの自覚症状はありませんでした。

術直後は、歯の動揺を認め咬合調整を行い、その後、歯の動揺は治まりました。

若干歯肉の退縮は認めましたが、CTにて骨形成も確認でき術後の経過は良好です。